見やすい不動産図面の作り方|情報整理・Zの流れ・写真の3原則を実務解説

情報が整理された洗練された見やすい不動産図面のサンプル

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「物件は悪くないはずなのに、業者間サイトからの問い合わせが伸びない」——。原因が物件ではなく図面の作りにあることは珍しくありません。マイソクは、他社の担当者が数十枚をめくりながら「客に出すかどうか」を数秒で決める資料です。読み取るのに手間がかかる一枚は、内容の良し悪し以前に選ばれません。

本記事では、見やすい不動産図面(販売図面・マイソク)の作り方を、①情報の絞り方 ②Zの流れによる配置 ③写真の扱い の順に、作る側の手順としてまとめます。あわせて、崩れやすい箇所の直し方と、表記で外せない数値ルールを条番号つきで整理します。

マイソクそのものの定義や必須の記載項目はマイソクとは?意味・語源から記載項目・作り方・法律ルールまでで解説しています。

見やすい図面とは、情報が少ない図面のことではない

情報が整理された見やすい不動産図面のサンプル

「見やすくしたい」と考えると、まず情報を減らそうとしがちです。しかしマイソクに載せる項目の多くは、公正競争規約が求める表示事項なので、勝手に削ることはできません。減らすのではなく、同じ量の情報に強弱をつけるのが正しい方向です。

実務でよく見る差は、おおむね次の4点に集約されます。

観点 読まれる図面 読まれない図面
強弱 最初に読ませたいものが1つだけ決まっていて、それが最も大きい 価格・面積・駅距離が全部同じ大きさで並んでいる
余白 項目の固まりごとに余白があり、どこで話が変わるか分かる 枠いっぱいに詰まっていて、区切りが罫線しかない
写真 外観・室内・水回りが揃い、明るく歪みがない 外観1枚だけ。小さい・暗い・傾いている
下部に横一列で独立していて、そこだけ差し替えられる 会社情報が本文の中に散っていて、帯替えすると食い違う

4つ目の「帯」は、他の3つと性質が違います。見やすさというより流通のしやすさの問題で、客付業者が自社の情報に差し替えて配れるかどうかが決まります。ここが独立していない図面は、そもそも配ってもらえません。帯替えの実務はマイソクの帯替えとは?やり方・無料でできる手順で詳しく扱っています。

見やすい図面の作り方(5つの手順)

いきなりレイアウトから入ると、たいてい途中で情報が入りきらなくなって崩れます。次の順で決めていくと、作り直しが減ります。

手順1:載せる情報を先に確定する

デザインより先に、載せる項目を確定させます。必ず入れる事項は物件の種別で変わります。売買と賃貸、土地と建物、居住用と収益物件では、書かなければならないことが違うためです。

正解は「不動産の表示に関する公正競争規約」の第8条(必要な表示事項)と、その施行規則の別表にあります。自社が扱う種別の別表を開き、「○」が付いている事項をそのまま枠に起こすのが最も確実です。この作業を最初に済ませておくと、後から「専有面積を入れる場所がない」といった手戻りが起きません。

手順2:先に読ませる情報を1つだけ決める

強弱をつけるとは、何を最初に読ませるかを1つに絞るということです。多くの場合は価格(賃料)ですが、駅徒歩3分が最大の売りなら駅距離、角部屋・南向き・リノベ済みが決め手ならそのひと言でも構いません。

ここで2つ3つを同格で立てると、結局どれも目に入りません。強調が多すぎる紙面は、強調がない紙面と同じです。1つ決めたうえで、次に読ませたいものを2番手として一段落とす、という考え方で並べます。

手順3:Zの流れに沿って置く

人の視線は紙面を「左上 → 右上 → 左下 → 右下」とZを描くように動くとされます。この順に情報を置くと、読み手が自然な順番で内容を追えます。詳しい配置は次章の表にまとめました。

手順4:文字の大小と余白を決める

文字サイズに法的な決まりはありません。決めるべきなのは絶対値ではなく比率です。基準を本文(物件概要の数値)に置き、そこからの倍率で考えると、A4横に落とし込んだときに破綻しにくくなります。

要素 大きさの考え方 ねらい
最重要(価格など) 本文の2.5〜3倍。紙面で一番大きい文字にする 数秒で「いくらの物件か」が分かる
2番手(キャッチ) 本文の1.5倍前後。最重要より明確に小さく 価格の次に読ませる。同格にしない
本文(物件概要) 基準。ここを小さくしすぎない 読み取れなければ載せていないのと同じ
注記・備考 本文の0.8倍程度まで。これ以上落とさない 条件や制限を読ませる責任がある
本文と同等。小さくして詰めない 取引態様・免許証番号は読める必要がある

倍率が決まったら、必ず実寸で1枚印刷して確認します。画面では読めても、A4横に落とすと注記が潰れることがよくあります。実務では、印刷した紙を机に置いて座ったまま読めるかどうかを基準にすると分かりやすいです。

余白は「空いている場所」ではなく、区切りを伝えるための要素です。罫線で全部を囲むより、関連する項目をまとめて周囲に余白を取るほうが、どこで話が変わるかが伝わります。

あわせて白黒で1枚コピーしてみてください。マイソクは配られる過程で白黒印刷されることが珍しくありません。色の濃淡だけで分けていた見出しや、薄い色地に白抜きした文字は、白黒にすると区別がつかなくなります。色を外しても意味が残るかどうかは、太さ・大きさ・余白で作っておきます。

手順4-2:縮小されたときに何が残るかを確かめる

業者間サイトやポータルの一覧では、マイソクは小さなサムネイルとして表示されます。原寸で整っていても、縮小すると文字はほぼ読めず、残るのは写真の明るさと、価格の塊の位置だけです。

そこで、作った図面を画面上で1/4程度まで縮めて眺めてみます。この状態で「物件の種類」と「価格帯」が伝わるなら、一覧のなかで拾ってもらえます。何も分からないなら、最重要の要素がまだ小さいか、写真が暗いということです。原寸での完成度とは別に、この確認を挟むと選ばれる率が変わります。

手順5:帯を独立させる

取引態様・商号・免許証番号・連絡先は、紙面下部の横一列(帯)にまとめます。本文に混ぜると、帯替えのときに広告主の情報が食い違ったまま流通してしまいます。制作時のチェックは単純で、「この帯だけを切り取って貼り替えられるか」を見ます。本文と地続きになっていたら設計を直します。

Zの流れ:4つの区画に何を置くか

視線がZ字に動くことを示す不動産図面のレイアウト図解

A4横を上下左右の4区画に分けて考えます。帯はこの4区画の外側、紙面下部に全幅で置きます。

位置 置くもの 理由
左上 外観写真、または最も伝えたい室内写真 視線が最初に届く。印象がここで決まる
右上 価格(賃料)とキャッチコピー 写真で引いた関心を、条件で受け止める
左下 間取図 価格を見た人が次に確かめるのは部屋の形
右下 設備・セールスポイント・物件概要 検討を後押しする補足。ここは連絡先の場所ではない
下部(全幅) 帯(取引態様・商号・免許証番号・連絡先) 帯替えで丸ごと差し替わる欄なので独立させる

右下を「連絡先の定位置」と説明している資料を見かけますが、マイソクでは会社情報は帯にまとめるのが通例です。右下に会社情報を置くと帯と二重になり、帯替えのときに消し忘れが起きます。

写真の3原則

不動産写真の補正前と補正後を比較したビフォーアフター

写真は図面のなかで最も面積を取る要素で、第一印象をほぼ決めます。押さえるのは「何を撮るか」「どう撮るか」「どこまで直してよいか」の3つです。

何を撮るか

外観1枚では足りません。内見で必ず確認される箇所を先回りして押さえます。具体的には、外観・エントランス、居室(できるだけ広く見える角から)、水回り(キッチン・浴室・洗面)、収納の内部、日当たりが分かる窓際です。撮っていない箇所は「見せられない理由がある」と受け取られることがあります。

どう撮るか

晴れた日の日中に、照明を全部つけて撮ります。部屋は隅から対角線方向に構えると広く写ります。カメラを傾けると柱や窓枠が斜めになり、実際より狭く見えるので、垂直・水平は撮影時に合わせておきます。後から直すより確実です。

どこまで直してよいか

明るさ・コントラストの調整、垂直と水平の補正は、実物を正しく伝えるための仕上げです。一方で、家具の合成、空の入れ替え、傷や汚れの消去といった実物と乖離する加工は不当表示にあたり得ます。根拠は、毀損・汚損の程度を実際より軽微と誤認させる表示を禁じた表示規約第23条第20号と、宅地建物取引業法第32条(誇大広告等の禁止)です。

境目に迷ったら、「この写真を見て内見に来た人が、現地で落差を感じるか」で判断すると分かりやすいです。落差が出るなら直しすぎです。

よくある崩れ方と、その直し方

作り直しの依頼を受けるときに繰り返し出てくる症状を整理しました。原因はデザインの技術より、手順の飛ばしにあることがほとんどです。

症状 原因 直し方
どこから読めばいいか分からない 先に読ませる情報を決めずに配置した 最重要を1つに絞り、他を一段小さくする
情報が入りきらない 必須表示事項を確認する前にレイアウトを組んだ 別表で項目を確定してから枠を割り直す
注記が読めない スペースが足りず、備考だけ極端に縮めた 実寸で印刷して確認。読めないなら他を削る
帯替えすると情報が食い違う 会社情報が本文にも書かれている 取引態様・商号・免許証番号を帯へ一本化する
写真が暗く狭く見える 曇天・照明オフ・カメラが傾いている 撮り直しが最短。補正での回復には限界がある
物件によって体裁がばらつく 担当者ごとに白紙から作っている 枠を固定したテンプレートに移行する

最後の「ばらつき」は、一枚ずつ直しても解決しません。枠を固定した型を用意する話になります。作り方はマイソクのテンプレートの作り方にまとめています。

表記で外せない数値ルール

見やすさをどれだけ詰めても、表記が誤っていれば信頼を失います。図面上で間違いが起きやすいものを条番号つきで挙げます。

項目 ルール 根拠
徒歩分数 道路距離80mを1分。1分未満は切り上げ。実測時間ではなく距離から算出する 表示規約施行規則 第10条第10号
起点・着点 距離や所要時間を書くときは、どこからどこまでかを明示する 同 第8号
面積 建物は延べ面積。中古マンションに限り登記簿面積を表示できる 同 第15号
畳数 1畳=1.62㎡以上の意味で使う(壁心面積÷畳数) 同 第16号
居室でない部屋 建築基準法第28条に適合しないものは「納戸」等と表示する 同 第17号
「新築」 建築後1年未満、かつ未入居の両方を満たすときだけ使える 表示規約 第18条第1号
取引態様 広告するときと、注文を受けたときの2場面で明示する義務がある 宅地建物取引業法 第34条第1項・第2項

条文は宅地建物取引業法および同施行規則、規約全文は不動産公正取引協議会連合会で確認できます。

よくあるご質問

A4横とA4縦、どちらで作るべきですか?

A4横が基本です。写真・間取図・物件概要を横並びに置けるため、Zの流れをそのまま使えます。縦にすると要素が上下に積まれ、視線の動きが単調になって強弱がつけにくくなります。

実際に歩いて4分半だったので「徒歩4分」と書けますか?

書けません。徒歩分数は実測時間ではなく道路距離から算出し、80mで1分、1分未満は切り上げます。距離が360mなら、何分で歩けたかにかかわらず「徒歩5分」です。

写真の明るさを上げるのは加工にあたりますか?

実物に近づけるための明るさ・コントラスト調整は、通常の仕上げの範囲です。問題になるのは、家具の合成や傷・汚れの消去など、現地との落差を生む加工です。

間取図は手書きのままでも大丈夫ですか?

読めれば法令上の問題はありませんが、他社の担当者がそのまま客に出せるかという観点では不利になります。写真と並べたときに明らかに解像度が低い間取図は、紙面全体の印象を下げます。

まとめ:見やすさは、手順で作れる

見やすい不動産図面は、デザインの才能ではなく手順の産物です。①載せる情報を別表で確定する ②先に読ませる情報を1つに絞る ③Zの流れで置く ④比率で文字の大小を決めて実寸で確認する ⑤帯を独立させる——この順に守るだけで、読み取りやすさは大きく変わります。写真と表記は「魅力的に、かつ実物に忠実に」が原則です。

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本記事における法令・規約の引用は、2026年8月時点の条文に基づいています。制度改正の可能性があるため、実務では必ず最新の条文をご確認ください。